店長日記 | ブランド腕時計専門店 CHRONO HEARTS(クロノハーツ)
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diary:3
2019年11月08日

伝統的な機械式時計における複雑機構の最高峰とされるのが、トゥールビヨン、永久カレンダー、ミニッツリピーターである。これにスプリットセコンドクロノグラフを加える場合もあるが、歴史的な時系列で言えば、この中で起源が最も古いのはミニッツリピーターになる

 音で時刻を告げる時計そのものはヨーロッパ中世にまでさかのぼるが、任意の操作によって現在の時刻を音で知らせる「リピーター(Repeater)」は、17世紀後半にイギリスの時計師エドワード・バーローやダニエル・クエアーが発明したとされる。当初は置き時計だったが、18世紀終わりにアブラアン-ルイ・ブレゲが鐘に相当するパーツをリング状のゴングに置き換え、それをムーブメントの外周に配置したことによって、画期的な薄型の懐中時計リピーターが誕生する。ブレゲが発明した方式は、現在までリピーターウォッチの基本になっている。

 リピーターは、利用者が時刻を知りたいときにレバーやボタンを押せば、時計に組み込まれたハンマーが鐘を叩き、そのチャイム音の回数で時刻が分かるのだが、この種の時計は、照明の未発達な時代に、夜間や暗闇でも時刻が確認できるように考え出されたのがそもそもの始まり。照明が行きわたる近代以降は必要不可欠なものではなくなったと言えるが、それでも高度な複雑機構と貴重な技術は19世紀の懐中時計や20世紀の腕時計のごく一部に受け継がれ、消滅せずに残った。そして、1990年代以降の機械式時計復活の流れに乗って再び脚光を浴びるようになり、時計愛好家の間で垂涎の的になっている。

 ところで、リピーターがリピートする(繰り返す)のは何なのかというと、機構を操作した時点で過ぎていった時刻である。それを耳で聞いて分かるように音に変換し、チャイム音で繰り返すゆえに“リピーター”なのだ。ただし、機構の作動中も時計自体は先に進んでいるから、現に今ダイアルで見ている時刻が必ずしも、そのまま反映されているわけではない。

 18世紀から現代まで一般的に使われている古典的な方式は基本的に下記の通りだ。音を発するのは、2本のハンマーと、低音と高音にそれぞれ調整されたリング状のゴングである。ユーザーが任意に作動レバーなどを操作すると機構に必要な動力が供給され、ハンマーがゴングを叩くストライク音で時刻を知らせる。ストライク音は連続する3パートから成る。

(1)時単位の数(アワー):低音の単音で、1回=1時から12回=12時。

(2)60分を15分単位に分割した数(クォーター):高音と低音を交互に組み合わせて鳴らし、高音→低音の1セット=15分、2セット繰り返し=30分、3セット繰り返し=45分。

(3)15分に満たない残り分数(ミニッツ):高音の単音で、1回=1分から14回=14分まで。

 ストライク音の回数が最も多くなり、よくデモンストレーションにも使われる12時59分の例ではこうなる。
●まず低音が12回鳴って12時。
●続いて59分を15分単位で割ると(15分×3回)+14分だから、高音と低音との組み合わせによるクォーターを3セット打って45分。
●最後に残った14分を高音で14回打つ。
 音の数は、(12)+(2×3)+(14)の合計32回にもなる。時間数は聞こえる低音の回数のままなので分かりやすいが、分数が15分を超え、15分で割り切れない場合は、クォーターと残りのミニッツのシークエンスを数えながら合算しなくてはならない。いずれにせよ、ダイアルを見れば一目瞭然の時刻も、音を聞き、頭で計算するとなるとそれほど易しくはない。

 次にミニッツリピーター独特の精巧な複雑機構について、概略を簡単に説明する。まずダイアルの針の位置情報を伝えるのは、カタツムリのような形をしたスネイルと呼ばれるカムだ。このカムをなぞってレバーが時刻の時間数と分数を読み取り、ラック(歯竿)を動かして、ハンマーのストライクへと続く。

(1)時刻の時間を読み取るのは、時針を動かす歯車と連動するカムのアワースネイル。12時間で1周するこのカムの外周には角度30°ごとに階段状に段差をつけた12の突起があり、1時間につき1段下がっていく形状を持つ。このカムに接触するレバーが段差をなぞり、時針の位置を識別する。情報は12歯のラックに伝わり低音用ハンマーを動かす。作動は1回から12回。

(2)15分単位についてもほぼ同様だ。分針と連動して60分で1周するカムのクォータースネイルは、角度にして90度、分数で15分ごとに4段階に分けられた段差がある。これをなぞるレバー付きのラックがクォーターの0、1、2、3の4パートを識別し、ラックが高音用と低音用のハンマーを交互に動かす。作動はセットで1回から3回。

(3)分数を告げるカムは4本の手を持ち、それぞれ外側に14の鋸歯を刻み、その姿は手裏剣を連想させる。クォータースネイルと一緒に分数をコントロールするこのカムから得た情報がラックに伝わり、高音用ハンマーを1回から14回作動させる。

 ミニッツリピーターは、永久カレンダーやトゥールビヨンと並んで機械式時計における古典的な3大複雑機構に数えられる。この中で最も古くからあり、伝統的なスタイルを今なお守っているのがミニッツリピーターと言える。上記のように、時刻を音に変換するためのカムの仕組み、ハンマーとゴングによるチャイム音、時間・15分・1分の組み合わせによる時刻表示など、基本的な作動原理と機能は懐中時計の頃とほとんど変わりない。伝統的な機械式時計が現代の先端技術によって進化し続ける中で、ミニッツリピーターだけがそのような潮流の外にあって、悠然と我が道を歩んでいるかのように見える。
2017年03月02日
機械式腕時計の魅力機械式時計は18~19世紀に小型化が進み、置き時計などを経て、懐中時計の時代となります。そして、諸説ありますが19世紀後半、簡単に持ち運ぶことができる時計に改良されたのが、腕時計の始まりと言われています。1960年代にクオーツ式時計が開発されるまで、時計はすべて機械式時計でした。

機械式時計とは、ゼンマイを動力として、複雑に連動する歯車によって動く時計のことです。電池交換の必要はありませんが、ゼンマイを巻かなくてはなりません。ゼンマイを巻く方法は、手で巻く『手巻き』と、人の動きを利用して巻く『自動巻き』の2種類があります。
それに対して電池式時計は、水晶に電圧をかけることによって起こる振動や回路など電子部品にて時間を計測し、電池の力で動きます。そのため数年に一度電池交換が必要です。

現在、流通している時計のほとんどは電池式のものです。精度が高く、値段も安く、メンテナンスもほぼ不要なため、瞬く間に普及しました。それにより大きく変わったことは、その時々の流行に合わせて付け替え、壊れたら買い換えるという時計の使い捨て時代へ移ったことです。その構造の為にクオーツ時計は、どんなに高価なものでも、人の手で作る事の出来ない電子部品の在庫がなくなれば修理不能となり、必ず動かせない時がきてしまうので、買い換えるのは仕方ないことと言えます。

一方で一生使い続けることのできる機械式時計の魅力が再認識されてきました。
機械式時計の魅力の一つは、熟練職人が一個一個パーツを磨き、何百年と途切れることなく受け継がれた伝統の中で完成された機能美を実感できることです。ムーブメントが見えない中でも秘められた伝統がそこにあります。また、機械の見れる裏ブタの時計なら、魂の込められたパーツたちが時を刻むムーブメントの出す味わいある美しさに酔いしれることもできます。そして、最大の魅力は、自分が歴史の延長線上にいるという事を身近に感じられ、さらに大切に使う事により子や孫などの世代や、想いを継いで永く愛されてゆくことができるところではないでしょうか。

200年も前の発明が脈々と受け継がれ、現代において電気をも使わない機械仕掛けの製品というのは、決して多くありません。長い年月を経た時計は、たずさわった人々の温もりや優しさであふれています。今や単なる時間を知るだけの道具の枠を超えて、人生にずっと寄り添ってくれるパートナーと言えるのではないでしょうか。
2016年11月16日



【時刻合わせ】

リュウズを1段階引出して、軽く上に回すと長針が1時間分早送りし、下に軽く回すと1時間分戻ります。

リュウズを2段階引出して上に回すと長針が1/5分!?ずつ進み、下に回すと1/5分ずつ戻ります。


【クロノグラフ針位置の修正】

①クロノグラフをリセットした位置にします。(リセットしてズレていても構いません。)

②リュウズを2段階引出します。

③Bボタンを押しながら2秒以内にAボタンをカチカチカチと3回押します。

④Bボタンを押すとクロノ針が進みますので、12時位置のゼロピッタリに合わせます。

⑤Aボタンを1回押します。

⑥Bボタンを押すと30分計の針が1目盛りずつ進み、押し続けると早送りします。30分計が2回転すると12時間計が1目盛り進みますので、30分計と12時間計がゼロの位置に来るように合わせます。

⑦リュウズを元の位置に戻し、クロノグラフの修正は完了です。


【カレンダーの修正】

◆閏年の調整

①リュウズを2段階引出します。

②Bボタンを2秒以内で2回、Aボタンを同じく2秒以内で2回押します。

③中央のクロノ針が動き出し、閏年から何年目であるかを指示します。

④Bボタンを押して次の通りに合わせます。12時=閏年、15分=1年目、30分=2年目、45分=3年目と15分単位で示します。

2016年が閏年となりますので、本日2015年8月8日は閏年から3年目となりますので、45分にクロノ針が合う様にセットします。

◆月の調整

⑤次にAボタンを押すとクロノ針が月を指示します。1月=1時、2月=2時・・・12月12時となります。

⑥Bボタンを押して合わせたい任意の月をクロノ針が指し示すまで複数回押します。

◆日の調整

⑦Aボタンを押すとクロノ針が日付を表示します。1日=1分、2日=2分・・・31日=31分となります。

⑧Bボタンを押すとクロノ針が1分ずつ進みますので、合わせたい任意の日付を指し示すまで複数回押します。

12時ジャスト=0分と32分以降は表示せず、自動的に1分の位置に移動します。

◆”時”の調整

⑨Aボタンを押すとクロノ針が”時”を指示します。1時=1分、2時=2分・・・10時=10分・・・19時=19分・・・24時=24分となりますので、合わせたい”時”を表示するまでBボタンを複数回押します。

⑩リュウズをもとの位置に戻します。

⑪上記の調整作業中は時計は止まった状態ですので、⑩までが完了したら最初に書いている通りで時刻を調整し完了です!!!